医療情報を、現場と制度の両側から読む株式会社医療ラボ
HEALTHCARE IT ─ SINCE 1999

医療の現場に、
忖度しない視点を。

電子カルテ27年。医療情報システムのコンサルティング・PMO・受託開発、そして医療データの二次利用支援。建前ではなく、現場で本当に効く「次の一手」を、制度と現場の両側から導きます。

27年EMR実装の知見
一次情報主義の論説
4領域の伴走支援
今週の論説
2026.10.07 ─ 個人情報・データ法制

「検知」が、守るべき措置の独立した一項目に ― 個人情報保護委員会が、大規模漏えいを受けて安全管理措置の見直し後の姿を先に示しました。
ログを残す仕組みはある。では、それを誰がいつ読むのでしょうか。

10月7日、個人情報保護委員会は第371回会合で「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について(注意喚起)」を決め、公表しました(報道発表の一覧への掲載は10月9日で、同日に解説動画も加わっています)。国民に広く普及したサービスを提供する事業者が外部からの不正アクセスを受け、大量の個人データが漏えいし、またはそのおそれが生じた事案に接していることを受けたもので、とくに大量の個人情報を持つ事業者や、機微性の高い個人情報を保有する事業者などに向けて、安全管理措置の徹底を求めています。中身の柱は、安全管理措置を定めるガイドライン(通則編)の別添「講ずべき安全管理措置の内容」の見直しの先取りです。この別添は平成28年11月の策定当時から内容が大きくは変わっておらず、委員会は9月16日の第369回会合で現代化を含めた見直しを決め、内容の確定は来年4月の予定としています。今回の注意喚起は、その見直し後の技術的安全管理措置を別紙として先に示しました。「講じなければならない措置」には、これまでの4項目(アクセス制御、アクセス者の識別と認証、外部からの不正アクセス等の防止、情報システムの使用に伴う漏えい等の防止)に加えて「(5)不正アクセス等の検知等」が独立した項目として並び、不正アクセスを早期に検知するための措置を平時から講じ、組織内ネットワークでの被害拡大を防げるよう運用することが求められています。手法の例示には、認証・アクセス・操作・通信などのログを一定期間保管して改ざんや不正消去から守ること、その定期的な分析、IDS/IPSやEDRなどによる常時監視、侵害を受けたシステムの停止・隔離やアカウントの無効化が並びます。ほかにも、アクセス要求ごとに場所・時間・端末の状態を評価して可否を判断する仕組み、フィッシングに耐性のあるものを含む多要素認証、組織が許可した端末からだけのアクセスといった、ゼロトラストの考え方を取り込んだ例示が加わりました。あわせて、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去する努力義務(法第22条。法令で保存期間が定められている場合は別)についても、改めて注意を促しています。同じ日には、2024年12月に公表した「WARNING~不正アクセスによる個人データ漏えい防止のための注意喚起~」も改訂され、VPN装置などの脆弱性の放置(システム業者との保守契約に脆弱性対応が含まれていなかった例を含む)、パッチ適用の遅れ、不正ログイン、グループ会社や海外拠点、クラウドサービス、APIの悪用など、9つの事例が整理されています。なお、ガイドライン上の「中小規模事業者」は従業員100人以下の事業者ですが、扱う個人情報の本人数が過去6か月以内のいずれかの日に5,000人を超えた事業者は含まれません。カルテに載る患者が5,000人を超える診療所は、従業員が少なくても、別紙の「中小規模事業者における手法の例示」ではなく通常の手法の例示の側に入ります。
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医療ラボの視点

見直しの確定は来年4月。それを待たずに、見直し後の姿を先に出してきました。待っていられない事案が続いている、ということなのでしょう。今回いちばん大きいのは、「検知」が守るべき措置の独立した一項目になったことだと思います。ログの分析は、これまでも手法の例として書かれてはいました。ただ、それが置かれていた項目の名前は「不正アクセス等の防止」でした。入られない前提から、入られる前提へ。言葉の置き場所が変わったのは、素直に一歩前進です。医療機関に置き換えてみると、ログを残す仕組みそのものは、電子カルテにもネットワーク機器にも備わっていることが多いでしょう。気になるのは、その先です。定期的に分析して、異常の兆しに早く気づく――それを、情報システムの担当者が限られる病院や診療所で、誰が、いつ担うのか。改訂されたWARNINGの最初の事例が、VPN装置の脆弱性と、保守契約に脆弱性対応が入っていなかった話だったことも、医療の現場には少し耳の痛いところかもしれません。医療機関には、厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインもあります。物差しが2本並ぶ現場にとって、来年4月の確定版が、実際に手を動かす人に届く言葉で書かれるかどうか。そこを見ておきたいところです。

医療情報トピックス

医療DXの動向を、両側から読み解く。

2026.10.01
個人情報・データ法制

AI開発も「統計作成等」なら同意不要に ― 個人情報保護委員会が、その特例の歯止めと公表方法の案を示しました

10月1日、個人情報保護委員会は第370回会合で、7月に成立した改正個人情報保護法(令和8年法律第56号)の政令・規則づくりの2回目となる「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方(案)について②」を示しました。9月16日の①に続くもので、今回は「統計作成等の特例」「委託先における個人データ等の適正な取扱い」「漏えい等報告・本人通知義務」の3項目です。統計作成等の特例は、統計情報やAIモデルなど、特定の個人との対応関係が排斥された「統計情報等」の作成にのみ使われることを条件に、本人の同意なく個人データを第三者に提供したり、現に公開されている要配慮個人情報を取得したりできるようにするものです。資料は、特例の対象となる行為を規則で「個人の権利利益を害するおそれが少ないもの」に限るとしたうえで、その要件の案として、目的外利用・第三者提供を防ぐ措置、統計情報等からの復元を含む漏えいの防止などの安全管理措置、不要になった個人情報等を遅滞なく消去する措置を挙げ、例として組織体制の整備やプライバシー強化技術(PETs)の利用をリスク評価に基づいて実施・記録することを示しました。学習データを増やす目的で本人に働きかけてその反応を集めるような、作成の過程で個人に直接影響を及ぼす手法は制限してはどうか、とも書いています。同意に代わる透明性の要となる公表については、事業者が自社ウェブサイトの一つのページに公表事項をすべて載せ、クローリング等を防ぐ措置を講じず、検索で把握しやすい特定のキーワードを含め、一定の期間掲載する、という方法を案として示し、委員会が指定するウェブサイトで公表する方法も論点に挙げました。資料には、病歴等を含む要配慮個人情報の第三者提供について、医療分野の事情を踏まえたガイドライン改正などで医師等の守秘義務や「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」との関係を明確に示すよう求めた参議院の附帯決議(7月8日)も再掲されています。ガイドライン等は今後の委員会で順次検討するとされています。漏えい等報告では、共用性のない社内IDのように、それ単体ではおよそ意味を持たない情報だけが漏えいした場合に本人通知を代替措置で済ませられるようにすること、体制・手順について認定個人情報保護団体などの第三者の確認を受けることを前提に一定の範囲で速報を免除すること、本人が1名の誤交付・誤送付については確報を一定期間ごとのまとめ報告で許容すること、違法な第三者提供も報告対象に加えることなどが示されました。参考資料に引かれた制度見直し時のデータでは、漏えい等報告のうち本人の数が1人の事案が全体の84.0%(10,184件)を占め、その例として病院や薬局における要配慮個人情報を含む書類の誤交付や紛失が挙げられています。

診療所では漏えい等報告のうち、本人1名への書類の誤交付・誤送付は、確報を一定期間ごとのまとめ報告でよいとする案が示されています。政令・規則は検討中で、まだ決まった扱いではありません。

医療ラボの視点統計情報やAIモデルを作るためだけなら、同意はいらない。その代わり、目的の外には使わない、元のデータに戻させない、要らなくなったら消す。今回の案は、特例の歯止めを一つずつ規則の言葉に落とし込もうとしていて、丁寧な仕事だと思います。本人に働きかけて反応を集めるような手法は外す、という一文にも、線を引こうとする意思が見えます。気になったのは、同意の代わりに置かれた「公表」の、受け取り手のほうでした。事業者のウェブページ1枚に、検索で見つかるキーワードを添えて載せる。透明性の確保として筋は通っていますが、自分の診療情報がどこかのAI開発に使われていないか、患者さんが自ら検索して確かめに行く――その場面は、正直あまり想像できません。委員会が指定するサイトに集める案が論点として残っているのは、その意味で心強いところです。もう一つは、医療の宿題です。病歴の扱いと、医師の守秘義務や倫理指針との関係をはっきりさせてほしい、という附帯決議は資料に載っていますが、答えはガイドラインの段に持ち越されました。同じ資料には、漏えい報告の大半が「本人1人」の事案で、病院や薬局の誤交付が多い、というデータも並んでいます。報告が軽くなるのは現場にはありがたい話です。ただ資料自身が、本人にとっては深刻な事態になり得る、と書き添えています。医療データは、この特例の影響をいちばん強く受ける領域のひとつです。規則とガイドラインの行間に、医療の事情がどこまで書き込まれるのか。見守りたいところです。
2026.09.30
データ二次利用

医療データ二次利用の「グランドデザイン」、内閣府の検討会がとりまとめ案を座長一任で了承 ― 次の舞台は令和9年の通常国会へ

9月30日、内閣府の「医療等情報の利活用の推進に関する検討会」第17回が開かれ、9月11日の第16回に示されたとりまとめ(案)に、構成員の意見を踏まえた修正を加えた案が示されました。共同通信などの報道によると、検討会はこの案を座長一任で了承しました。案は、医療等情報の一次利用と二次利用を一体的に進めるためのグランドデザインと制度枠組みをまとめたもので、研究開発を機能とする大規模な病院(例えば特定機能病院及び臨床研究中核病院)には民間の認定事業者の求めに応じた医療等情報の提供を義務付け、それ以外の医療機関等は努力義務とすること、データ収集時の同意に頼る「入口規制」から利活用時の審査による「出口規制」へ転換すること、患者の識別子は現時点では被保険者番号を活用する方向とすること、といった骨格は第16回の案を引き継いでいます。今回の修正では、9月11日の議論を受けた構成員の意見として、自己の情報を利用させる権利・アクセスさせない権利など国民主体のデータ利活用を基本理念で明確にすべき、生涯不変の識別子の在り方を引き続き検討し、国はデータの連結の状況を定期的に把握・公表すべき、データ利用申請から入手まで1〜2か月程度を目指すべき、制度の周知広報は準備段階から医療DXと一体的に行ってほしい、といった記載が書き加えられました。案の日付欄は「令和8年●月●日」のままで、最終的な文言は座長に委ねられています。政府は、必要な措置が法改正を要する場合、令和9年(2027年)の通常国会への法案提出を目指すとしています。

診療所ではデータ提供の義務が名指しされたのは研究開発を機能とする大規模な病院で、それ以外の医療機関等は努力義務とされています。診療所に直接の提供義務が生じる案にはなっていません。

医療ラボの視点骨格は2週間前の案のまま、了承されました。今回書き加えられたのは、その多くが「との意見があった」で結ばれる段落です。自己の情報にアクセスさせない権利を基本理念に、申請から入手まで1〜2か月を目指すべき、連結の状況は国が定期的に公表すべき。どれも、本文の方向を変えるのではなく、記録として隣に添えられた形です。とはいえ、記録に残ることには意味があります。厚労省の二次利用WGの資料には、NDBのデータ取得に1年以上かかる場合もある、という声が載っていました。そこへ「1〜2か月」という目標が並ぶと、物差しの差がよく見えます。座長一任は、最後の言葉選びを預けるということです。法案という次の器に移るとき、本文に格上げされるのはどの「意見」で、記録のまま残るのはどれなのか。そこを見ておきたいところです。
2026.09.18
医療AI

生成AIを使った医療機器の「審査ポイント」、PMDAが最初のたたき台を公表 ― 審査実績はまだゼロ、意見募集は2027年3月17日まで

9月18日、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は「医療機器プログラム(SaMD)の審査ポイントに関する意見募集」のページに、5件目のドラフトとして「生成AIを活用したプログラム医療機器(Draft)」を掲載し、2027年3月17日までの意見募集を始めました(文書の日付は2026年9月14日、作成は審査センター)。この取組は、2022年6月7日閣議決定の規制改革実施計画に基づき、開発事業者の予見性を高めるために審査のポイントをあらかじめ整理・公表するもので、同じページには7月1日公表のDigital Therapeutics など4件も並んでいます。今回の対象は、大規模言語モデル(LLM)や視覚言語モデル(VLM)として実現された生成AIを用いる医療機器です。文書は「本審査ポイント発行時点では生成AIを用いた医療機器に関する審査実績はない」と明記し、自らを「現時点でのたたき台」と位置づけています。どこまでを医療機器として扱うか(医療機器該当性)も慎重に議論されている最中で、本文は医療機器に該当した場合を前提にしている、とも断っています。中身は、生成AIの技術的特性を5つの側面(学習過程やモデル構造の大規模性、文脈に応じたコンテンツ生成能力、汎用性・多目的性、外部システムとの相互運用性、動作の自律性)で整理したうえで、評価上の課題として出力の不確定性・変動と出力妥当性の評価を、使用上の課題として説明可能性、適応外使用・不適切使用・誤使用、使用者のリテラシー、自動化バイアスなどの認知バイアスを挙げるものです。市販後については、ハルシネーションの発生状況等を積極的に収集し定期的な報告が「求められるであろう」とし、エージェント的に動く製品ではログの監視も想定しています。設計上望ましい措置としては、出力の根拠情報の提示、使用目的を逸脱した要求を拒否するガードレール機構、リテラシー向上のためのチェックリストや研修が挙げられ、出力への過度な依存で批判的思考や専門的技能が退化する「デスキリング」への懸念も書かれています。「おわりに」では、ハルシネーションを理由にリスクが許容できないとする声に対し、医療従事者は様々なエビデンスレベルの情報を解釈しながら判断している、生成AIの出力も同様ではないか、と問いかけたうえで、当面は、使用者が出力の成否を適切に判断できない場合には、その内容に精通する医師に確認をとることを義務付けることも「必要かもしれない」と結んでいます。

医療ラボの視点審査実績がゼロのうちに、審査する側が先に論点を並べてみせる。開発する側にとっては、何を準備すればよいかの見通しが立つ、ありがたい順番だと思います。生成AIの特性を5つに分けた整理も、手際がよく、読んでいて勉強になりました。そのうえで読み進めると、安全の最後の受け皿として何度も登場するのは「使用者」でした。根拠を示す、ガードレールで断る、といった設計側の工夫も並びますが、締めくくりはリテラシー、研修、そして分からなければ詳しい医師に確認を、です。文書は、医師はもともと玉石混交の文献を批判的に吟味して使ってきたのだから、生成AIも同様ではないか、と書きます。うなずける比喩です。ただ同じ文書の表が、文献には著者と掲載誌と査読があり、生成AIの出力にはそれがまだない、と自ら整理しています。さらに、便利になるほど確かめる力が落ちていく「デスキリング」の懸念まで、きちんと書いてあります。確かめる力に安全を預け、その確かめる力は使うほど細っていくかもしれない。この循環をどこで断つのかは、まだ白紙に近いように見えます。意見募集は半年と長めに取られています。開発者だけでなく、その「確認を求められる医師」の側の声がどれだけ届くのか。そこを見守りたいところです。
2026.09.18
全国医療情報PF

支払基金は10月1日に「DX審査支払機構」へ ― 医療DXの母体になる法人の名前が、まず利用規約の文言から変わりはじめました

9月18日、デジタル庁は「Public Medical Hub システム利用規約(医療機関等向け)の改正について」を公表しました。改正の内容は、規約中の「社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)」を「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(以下「DX審査支払機構」という。)」に改めるというもので、施行は2026年10月1日、すでに規約に同意している利用者の再同意は不要とされています。背景にあるのは、令和7年12月5日に成立し12日に公布された「医療法等の一部を改正する法律」です。同法の概要は、医療DXの推進を柱の一つに挙げ、「社会保険診療報酬支払基金を医療DXの運営に係る母体として名称、法人の目的、組織体制等の見直しを行う」と整理しています。支払基金自身の案内によれば、新名称は「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」、英語名はJapan Healthcare Payment & Digital Transformation Services、略称は「DX審査支払機構」または「HPDX」で、ホームページのドメインも ssk.or.jp から hpdx.or.jp へ変わります。本部事務所は9月24日に東京都港区新橋から江東区豊洲へ移転し、レセプトの提出先・電話番号・地方拠点の住所に変更はないとされています。法案審議の際には、衆参両院の厚生労働委員会が附帯決議で、組織体制の見直しに当たり「引き続き審査支払機能を果たせるよう、人員配置を含め、適切な運営体制を確保すること」(衆院)、「医療DXに関する専門人材を十分確保すること」「改組後の組織運営に要する費用負担の在り方については、審査支払業務と医療DX関連業務の双方を十全に担っていくこと等を踏まえて、検討すること」(参院)を求めています。

医療ラボの視点オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス。ここ数年、医療DXの実務をいちばん多く抱えてきた組織が、10月1日に名前と目的を変えます。新しい名称は「医療情報基盤」が先に来て、「診療報酬審査支払」が後ろに付きました。順番には、たぶん意味があるのだろうと思います。興味深いのは、その大きな変更が、現場にはまず利用規約の文言修正として届くことです。「支払基金」を「DX審査支払機構」に読み替えます、再同意は不要です――10月1日をまたぐシステムの数だけ、同じ趣旨の改正告知が並んでいくことになります。名前が変わるのは一瞬ですが、その名前を参照している文書と設定は、思いのほかあちこちに散らばっているものです。もう一つ、附帯決議の並びが率直でした。衆院は「引き続き審査支払機能を果たせるよう」人員配置に留意せよと言い、参院は「医療DXに関する専門人材を十分確保せよ」と言っています。二つの業務が同じ人手と同じ費用を取り合うことへの心配が、成立の時点で先回りして書き込まれているようにも読めます。名称の順番が「基盤」から始まったあと、実際の人と予算がどちらから順に埋まっていくのか。静かに見ておきたいところです。
2026.09.16
個人情報・データ法制

改正個人情報保護法、政令・規則づくりが始まりました ― 「統計作成等(AI開発を含む)」の特例は、9月下旬〜10月上旬の議題に

7月に成立した改正個人情報保護法(令和8年法律第56号)について、個人情報保護委員会は9月9日の第368回会合で「政令・規則・ガイドライン等の整備に関する今後の進め方(案)」を、9月16日の第369回会合で「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方(案)について①」を示しました。進め方の案では、改正法の4つの分類(適正なデータ利活用の推進、リスクに適切に対応した規律、不適正利用等防止、規律遵守の実効性確保)ごとに委員会が基本的な考え方を示して議論し、事業者の立場の団体・多様な個人の立場の団体との意見交換や事務局ヒアリングを経て具体的内容、条文案へと進み、その後に意見公募(パブリックコメント)を始める流れとされています。あわせて示された「当面のスケジュールのイメージ(案)」では、9月中旬に子供の個人情報・顔特徴データ・本人関与に関する規律、9月下旬〜10月上旬に統計作成等・委託先・漏えい等、10月中旬に連絡可能個人関連情報・オプトアウト・課徴金を扱うとされています。16日の資料は、「取得の状況からみて本人の意思に反しないため本人の権利利益を害しないことが明らかな」場合に同意を不要とする規定について、本人にとって不測の権利利益の侵害をもたらさないことが自明である場合に限られる、との考え方を示し、ホテル予約や海外送金を例に挙げました。同じ資料の「全体像」には、統計情報等の作成(AI開発等を含む)にのみ利用される場合の同意不要の特例、公衆衛生の向上等のために個人情報を取り扱う場合の同意取得困難性要件の緩和、「学術研究機関等」に医療の提供を目的とする機関又は団体が含まれることの明示も並んでいます。なお9日の会合には、次世代医療基盤法に基づく認定作成事業者の認定(医療AI推進機構株式会社の申請)に係る協議について、画像情報を含む匿名加工医療情報の作成には慎重な検討を求める意見を付して了承する案も諮られました。

医療ラボの視点法律が通ったあとの、いちばん地味で、いちばん効いてくる段階に入りました。進め方の案に添えられた「意見交換会・事務局ヒアリングの概要(案)」には、意見を聞く相手の団体名が具体的に並んでいます。事業者の立場として経済団体やIT業界の団体、個人の立場として消費者団体やプライバシー・データ関連の団体。丁寧な設計だと思う一方で、その一覧に、医療関係の団体の名前は見当たりませんでした。統計作成等の特例は、6月に日本医療情報学会が懸念の意見書を出した論点で、医療データはその影響をもっとも強く受ける領域のひとつです。病歴は要配慮個人情報の代表例でもあります。一覧は「概要(案)」なので、これから広がるのかもしれません。9月下旬からの議論で、医療の実務が規則の行間にどう書き込まれるのか。聞く相手の顔ぶれも含めて、見ておきたいところです。
2026.09.16
データ二次利用

公的DBの仮名化情報、提供は令和10年度中から ― 厚労省WGが「情報連携基盤」の安全管理と「研究対象者数の事前確認」機能を議論

9月16日、厚生労働省の健康・医療・介護情報利活用検討会「医療等情報の二次利用に関するワーキンググループ」の第6回が開かれました。資料2は、令和7年の医療法等改正で可能になった、厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベース(NDB等の公的DB)の仮名化情報の利用・提供について、改正法が公布後3年以内の施行であることから「令和10年度中からの運用開始を目指して準備を進める」とし、令和10年度12月までに政令・省令等の改正を検討し、新しい申請・審査体制に必要なシステム開発を行う工程を示しました。研究者がリモートアクセスして解析する「情報連携基盤」は、ガバメントクラウド上に令和8年度から構築を始めているとされています。この日の論点(案)は、利用者と基盤の安全管理措置を、既存の医療・介護データ解析環境であるHICの考え方を踏襲して設定し、さらにガバメントクラウドのセキュリティ対策を適用すること、基盤に持ち込む情報を厚労省がセキュリティチェックすること、研究実施の意思が確認できた研究者に研究対象者数を事前に閲覧できる「研究フィージビリティ調査機能」を設けること(一定数未満の結果は表示しない等の制御を行う)、個別の特別抽出に加えて「パターン抽出(仮称)」のデータを受け取れるようにすること、などです。電子カルテ情報共有サービスで共有される情報から氏名等を削除・変換して格納する「電子カルテ情報データベース(仮称)」も、今後の論点として挙げられています。資料には、9月11日の内閣府検討会のとりまとめ(案)のうち、厚労省が構築を進める情報連携基盤に関する記載も引用されました。

医療ラボの視点資料の「これまでの主なご意見」に、NDBの活用ではデータの取得に1年以上かかる場合もある、という一行がありました。研究対象者数を先に確かめられる機能や、あらかじめ型の決まった「パターン抽出」は、その1年への素直な答えなのでしょう。安全の側はHICとガバメントクラウドの二段構えで、速さと守りを同じ机に載せて議論しようとしている姿勢は伝わってきます。一方で、電子カルテ情報データベースについては、レセプトとは違って「今後新しくつくられるデータであり、丁寧に議論する必要がある」という意見も載っています。肝心の電子カルテ情報共有サービスは、この冬にようやく全国運用が始まるところです。まだ流れ始めていないデータの、二次利用の器を先に設計しておく。順番としては理にかなっていますが、器がどれほど立派でも、中身の質は入力する現場の手元で決まります。そちらの議論が同じ熱量で追いついてくるかどうか、見ていたいところです。
支援事例

紙カルテから電子カルテへ。そして、最初の更新まで。

導入して終わりではなく、使い続けるあいだの面倒まで。6年目を迎えた、クリニックとのお付き合いの記録です。

耳鼻咽喉科クリニック ─ 支援6年目

製品選びから稼働、院内の流れづくりまで。5年後の更新では、診察室のIT環境ごと見直しています。

01 ─ 選ぶ

紙カルテからの電子化

必要な機能の整理と製品の比較から始めました。紙カルテの運用をどう移すかの方針も、このときに一緒に決めています。

02 ─ 動かす

導入・移行と院内の運用設計

スケジュールの管理、マスタの設定、稼働日の立ち会い。受付から診察、会計までの流れを組み直し、スタッフ向けの手順書も整えました。

03 ─ 磨く

更新に合わせた診察室の見直し

電子カルテの更新に合わせて、複数の画面と機器を一つの席から扱える配置、よく使う操作をボタン一つで呼び出す仕組み、医薬品情報をすぐ引ける閲覧ツール、医師向けのクイックマニュアルを用意。入れ替えの前には、診療時間外に訪問して実機で試験しています。

※ ご了承をいただいたうえで、医療機関名・製品名を伏せて掲載しています。

事業領域

医療の「次の一手」を、実行まで。

01

プロジェクト
マネジメント実行支援

選定・導入・更新の現場で、計画から稼働まで伴走。要件の抜けや運用の穴を塞ぎます。

02

マネジメント
コンサルティング

経営と現場をつなぐ視点で、医療機関の意思決定と業務改善を支えます。

03

システム
コンサルティング

標準化の波を自院の業務に落とし込む。ベンダー中立の立場で最適解を導きます。

04

受託開発業務

27年の実装知見で、医療現場で本当に動くシステムを確実に形にします。

私たちの強み

数字を見るだけでは、医療は変わらない。

01

電子カルテ27年の実装知見

汎用機の時代からAI活用まで、医療情報システムの進歩とともに歩んできた現場の知見が土台です。

02

現場と制度の両側を知る

告示・通知などの一次情報を押さえつつ、現場で何が起きるかを併せて読む。机上論で終わらせません。

03

ベンダー中立・忖度しない

特定製品ありきではなく、医療機関にとっての最適を率直に。だからこそ言える本音があります。

04

見る→決める→動くまで伴走

課題の可視化で終わらず、意思決定と実行までを支える。動くものを、確実に届けます。

会社案内

ITで医療の未来を想像し、人の未来に貢献する。

会社名株式会社医療ラボ
代表者代表取締役 髙月 常光
所在地〒279-0041 千葉県浦安市堀江3-28-31
電話090-8893-2345
事業内容プロジェクトマネジメント実行支援/マネジメントコンサルティング/システムコンサルティング/受託開発業務

その「次の一手」、
一緒に考えませんか。

医療情報システムの選定・導入から、データ活用、PMOまで。まずはお気軽にご相談ください。