医療情報を、現場と制度の両側から読む株式会社医療ラボ
HEALTHCARE IT ─ SINCE 1999

医療の現場に、
忖度しない視点を。

電子カルテ27年。医療情報システムのコンサルティング・PMO・受託開発、そして医療データの二次利用支援。建前ではなく、現場で本当に効く「次の一手」を、制度と現場の両側から導きます。

27年EMR実装の知見
一次情報主義の論説
4領域の伴走支援
今週の論説
2026.08.27 ─ 電子カルテ標準化

200床以上の病院は2028年度までに電子カルテ100%へ。
告示となる「医療情報化推進方針」の案が示されました ― この期限は、誰が見届けるのでしょうか。

8月27日、厚生労働省は社会保障審議会の医療保険部会(第213回)と医療部会(第130回)に「医療情報化推進方針(案)」を示しました。地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律第11条の2第1項に基づく厚生労働大臣告示で、令和8年10月1日から適用するとされています。方針の対象期間は2026年10月1日から2030年3月31日までの3年半です。目標としては、2028年度までに、電子カルテ未導入の200床以上の病院(療養病床等が中心の病院を除く)について電子カルテ普及率100%を目指すこと、また2030年末までに、①必要な患者の医療情報の共有が可能な電子カルテの普及率約100%の達成、②地域の拠点となる病院全てに対するセキュリティ点検・外部接続点の適正化等のサイバーセキュリティ対策の実施、③大病院向けのクラウドネイティブ型製品(電子カルテ・部門システム)が提供される環境の整備、の3点が明記されました。2030年末に約100%という水準は、昨年公布された医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号)にすでに規定されているものです。方針案はこのほか、政府DXサービスへの接続等を要件とする標準仕様に即したクラウドネイティブ型電子カルテの認証制度を2026年度中に構築すること、標準型電子カルテ(導入版)について2026年度中の完成を目指すこと、電子カルテ情報共有サービスを2026年度冬をめどに全国で運用開始することなども盛り込まれています。冒頭には「点で進んできたDXを、国がハブとなって線につなぎ、やがて面へ。」「オンプレミスのたこつぼ化を越え、クラウドで基盤をつなぎ直す。」という標語が置かれました。
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医療ラボの視点

2030年末に約100%という数字そのものは、昨年の法改正ですでに決まっていました。今回新しいのは、その手前に「2028年度・200床以上」という中間の杭が打たれ、それが告示という形をとることでしょう。長い目標に途中の駅ができるのは、測る側にとっても測られる側にとっても、悪い話ではないと思います。少し気になったのは、日付の並びのほうでした。方針の対象期間は2030年3月31日まで。一方で目標の多くは「2030年末まで」に置かれています。締切のほうが、方針の任期より9か月ほど後ろにあります。次の方針へ引き継ぐ前提なのだろうとは思いますが、期限を定めた文書が、その期限を自分では見届けない構図ではあります。もうひとつ、告示の案に「たこつぼ」という語が置かれているのは、あまり見ない光景でした。言い得ているだけに、そのたこつぼを誰がどんな事情で掘ってきたのか――そこも一緒に整理されると、移行の話はもう少し進めやすくなりそうです。名指しされたのは「未導入の」200床以上の病院です。この時期まで残っているところには、それぞれ理由があります。杭を打つ位置よりも、その理由の側に手が届くかどうかを、静かに見ておきたいところです。

医療情報トピックス

医療DXの動向を、両側から読み解く。

2026.08.27
全国医療情報PF

電子カルテ情報共有サービス、2026年度冬めどに全国で運用開始へ ― モデル事業の課題は「説明前の感染症情報」と「院内コードの読み替え」

同じ8月27日の第130回社会保障審議会医療部会に、電子カルテ情報共有サービスの実施状況が報告されました。現在は全国10地域のモデル事業で運用の検証と課題の確認が進められており、令和8年度冬頃に全国で利用可能な状態にすること(運用開始)を目指すスケジュール(案)が示されています。課題と対応策の例として、感染症情報について医師が患者に説明していない状態で共有されることへの懸念(医療機関等向けと患者向けで共有のタイミングを整理)、食品アレルギーで使われる医療機関内のコードと情報共有に用いるコードのマッピング(最低限マッピングすべきものとルールを整理)が挙げられました。あわせて「医療従事者向けの指針」の検討が進められており、電子診療録等情報に係る体制整備の努力義務は、運用開始の段階ではまず法律上想定された地域医療支援病院を指定したうえで、対象の拡大を引き続き検討するとされています。

医療ラボの視点課題として資料に挙がった2つが、どちらも技術そのものの話ではなかったのが目を引きます。感染症の情報が、医師が本人に説明するより先に画面へ出てしまう――仕様の不備というより、情報が流れる速さと、人が話す速さのずれでしょう。食品アレルギーのコードの読み替えのほうも、院内で長く使ってきた言葉を全国共通の言葉に置き換える作業で、方針を決めるのは一度でも、確かめるのは一つひとつです。冬までに、と聞くと少し急いで見えますが、こうした「人の側」の課題が資料に正直に書き出されていることは、むしろ心強い気もします。努力義務の対象をまず地域医療支援病院からとしたのも、堅実な入り方です。あとは、その後ろに続く病院に何がどう伝わるか――そこを見守りたいところです。
2026.08.27
電子処方箋

電子処方箋の導入率41.3% ― 運用開始済みでも「1か月間まったく登録なし」が病院の23.7%、医科診療所の41.6%

8月27日の第213回社会保障審議会医療保険部会に、電子処方箋の進捗状況と今後の対応が示されました。令和8年6月時点の導入率は全体で41.3%(病院20.9%、医科診療所29.5%、歯科診療所10.7%、薬局90.5%)。一方、令和8年3月以前に運用を開始した施設のうち、令和8年4月時点で電子処方箋管理サービスへの院外処方箋情報の登録実績がない医療機関の割合は、病院23.7%、医科診療所41.6%、歯科診療所72.5%、調剤結果の登録実績がない薬局は8.5%でした。重複投薬等チェックの実績がない施設の割合は、病院27.3%、医科診療所52.5%、歯科診療所73.6%、薬局19.3%です。あわせてNDBデータを用いた効果検証の結果も示され、薬局への導入後10か月時点で処方箋1枚あたりの投薬日数が0.39日減少したことが統計的に有意に確認されたとされました(2024年度の全薬局平均である処方箋1枚あたり49.2日の0.79%に相当)。厚生労働省は、調剤結果等のデータ登録と、その登録に対し原則1回以上の重複投薬等チェックの実施を引き続き促すとしています。

医療ラボの視点数字が三段構えで並びました。導入した施設が41.3%、そのうち1か月間まったく登録がなかった施設が病院で4分の1近く、そして効果は処方箋1枚あたり0.39日。どれも都合のよい数字ではありませんが、そのまま資料に載せたことは、まず受け止めたいところです。気にかかるのは「導入した」と「使っている」の間にある距離のほうでしょうか。補助金も加算も、多くは導入の側に付きます。運用開始済みなのに登録が一度もない、という状態が一定数生まれるのは、制度が数えているものと、現場で起きていることが少しずれているからかもしれません。0.79%という効果は、正直なところ小さく見えます。次に要るのは、導入率をもう一段押し上げることよりも、すでに入っている仕組みのスイッチが入るかどうか――そちらを静かに見ておきたいところです。
2026.08.27
研究倫理

生命科学・医学系研究の倫理指針を改正 ―「文書IC」「口頭IC」「適切な同意」を「IC」に統一、既存情報を使う研究は原則オプトアウトへ

8月27日、文部科学省・厚生労働省・経済産業省は「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件」(令和8年 文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)を告示し、あわせて施行通知を発出しました。施行は令和8年12月1日です。通知は改正の趣旨として、個人情報保護法の改正のたびに指針の部分的改正を重ねた結果、指針の内容が「複雑かつ難解となり、研究を停滞させる一因になっている可能性」を指摘されたこと、規制改革実施計画(令和6年6月21日閣議決定)において多機関共同研究の一括した倫理審査が十分に普及していないことや倫理審査委員会の審査の質のばらつきが指摘されたことを挙げています。主な改正点は、基本方針に患者・市民の視点を尊重することを規定したこと、研究を「侵襲を伴う研究又は介入を行う研究」「試料を用いる研究」「試料を用いない研究」の3つに分類してリスクに応じインフォームド・コンセント(IC)又はオプトアウトのいずれかを行うこととし、「文書IC」「口頭IC」「適切な同意」の用語を「IC」に統一したこと、既存情報を用いる研究にも既存試料と同様の要件を適用して原則オプトアウトとしたこと、侵襲・介入研究の多機関共同研究では一の倫理審査委員会による一括した審査を必須としたことなどです。実施中の研究については、個人情報保護関連法令及びガイドラインの規定が遵守される場合に限り、なお従前の例によることができる経過措置が置かれました。

医療ラボの視点「複雑かつ難解となり、研究を停滞させる一因になっている可能性」――自らの指針についてここまで書いた通知は、なかなか率直です。整理そのものは、素直に歓迎したいところでしょう。三つに分かれていた同意の呼び名は「IC」の一語にまとまり、審査の重さも研究のリスクに応じて配分し直されました。ただ、簡素になったのは主に手続の呼び方のほうで、実際の線引きは、これから改訂されるガイダンスに委ねられています。もう一つ目に留まるのは、既存の情報を使う研究が既存試料と同じ扱いに揃い、原則オプトアウトになったことです。渡す側の手続は軽くなりますが、オプトアウトは通知の中で「拒否できる機会を保障する方法」と定義されています。その保障が実際に働くかどうかは、本人がその研究を容易に知り得る状態に置かれているか次第でしょう。施行は12月1日。改正個人情報保護法の政令・規則・ガイドラインも、そう遠くないうちに姿を見せます。指針が簡潔になるほど、その外側にある法令のほうを丁寧に読む必要が出てくる――そんな冬になるのかもしれません。
2026.08.21
電子カルテ標準化

大病院の電子カルテもクラウドへ ― 刷新協議会の令和8年度構成員が決まり、キックオフは8月4日

8月21日、デジタル庁は「令和8年度 病院情報システム等の刷新に向けた協議会」の構成員が決定したことを公表しました。協議会は、電子カルテ・医事会計システム・部門システムを一体的に、モダン技術を活用したクラウド型システムへ移行する方針の実現に向けて、システム要件を整理するものです。令和7年度は中小病院向けの標準仕様を取りまとめ、令和8年度は大病院向け要件の取りまとめに着手します。構成員は6月上旬に決定し、キックオフは8月4日に実施されました。分科会A(主機能要件検討)は電子カルテ・医事会計システム提供事業者6社(レスコ、亀田医療情報、ヘンリー、富士通Japan、日本電気、日本IBM)で構成され、今年度中に大病院向け電子カルテのクラウドネイティブ化に必要なシステム要件を整理するとしています。

医療ラボの視点中小病院の次は大病院、という順番そのものは素直な選択に見えます。難しいのは、大病院ほど部門システムの数も、個別の作り込みも、積み上げてきた運用の癖も多いことです。「一体的に」「モダン技術を活用したクラウド型」という言葉は軽やかですが、実際に担ぐのは何十年ぶんかの現場の手順書のほうです。もう一つ目に留まるのは日付でした。構成員が決まったのが6月上旬、キックオフが8月4日、公表が8月21日。そして要件整理の期限は「今年度中」です。顔ぶれには大手と新しい世代の両方が並びました。ここで決まる要件が、後から向かう事業者にとっても入りやすい形になるのかどうか――そこは静かに見守りたいところです。
2026.08.19
データ二次利用

自治体のレセプトを匿名加工して、製薬企業・保険会社へ ― 個情委が重ねて注意喚起

8月19日、個人情報保護委員会は「レセプトデータ等の保有個人情報の利活用に関する注意喚起(行政機関等匿名加工情報の利用・提供について)」を公表しました。判明した事案は、民間事業者が地方公共団体から委託を受けてレセプトデータ・調剤データ等を加工し、行政機関等匿名加工情報を作成して納品したうえで、覚書に基づきその事業者に提供され、さらに製薬企業や保険会社へ提供されていたというものです。データ利用契約には製品開発・市場分析・マーケティング戦略等、保険数理・保険新商品開発・引受査定の高度化等での利用が記載される一方、利用状況や成果を自治体にフィードバックする規定は置かれていませんでした。委員会は、加工前の保有個人情報に係る利用目的の範囲内である必要があるとしたうえで、少なくとも利用成果が自治体にフィードバックされ検証できる体制の下で実施されることが必要であることを示しています。

医療ラボの視点「匿名加工してあるのだから自由に使える」という言い方が、どこかで一人歩きしていたのかもしれません。指摘は加工の技術ではなく、その手前――そのデータは何のために集められたのか、という一点に向けられています。国民健康保険の保険者として、保険給付と保健事業のために預かった情報が、市場分析や引受査定の高度化にまで届いていました。距離としては、少し遠い気もします。使われるばかりで結果が戻ってこない関係は、そもそも「保健事業のため」とは呼びにくい、ということでしょう。二度目の注意喚起であることの意味を、静かに見ておきたいところです。
2026.08.05
医療DX推進体制

「医療DX令和ビジョン2030」推進チームが「ヘルスケアAX・DX推進本部」に改組 ― DXの前にAXが付くと、現場の何が変わるのでしょうか

8月5日、厚生労働省は「厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部」の第1回会合を開きました。この本部は「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チームを改組したもので、設置要綱は8月4日付で一部改正されています。本部長は厚生労働大臣、事務局は政策統括官(情報政策担当)付情報政策総括担当参事官室です。あわせて同じ8月4日付で「AI for ヘルスケア成長戦略室」の設置規程が定められ、医務技監を室長として、AI推進法(令和7年法律第53号)にいう人工知能関連技術の医療・介護・福祉・保健分野での活用に向けた施策を具体化することとされました。この前日には厚生労働省組織令等の一部改正(令和8年政令第245号ほか)が公布され、8月4日から施行。DX専属の局長級幹部として政策統括官(情報政策担当)が置かれ、その下に参事官4名からなる新組織が設けられています。初会合の開催時間は11時30分から11時50分までの20分間でした。

医療ラボの視点看板の掛け替え、と言ってしまうと意地悪でしょうか。ただ、今回動いたのは看板だけではありません。DX専属の幹部が課長級から局長級に上がり、複数の部局に散っていた所掌が一人の統括官のもとに集まりました。縦割りを解くという意味では、まっとうな手当てに見えます。気になるのはむしろ、名前のほうです。「医療DX令和ビジョン2030」という、達成年を自ら名前に背負った組織が、その2030年を待たずにAXという新しい語へ席を譲りました。旧称が抱えていた宿題――電子カルテの普及、情報共有サービスの本格運用――が、新しい看板のどこに引き継がれるのか。そこはこれから示されるのだろうと思います。初会合は20分間でした。次の会合が何分になるのかも、あわせて静かに見守りたいところです。
事業領域

医療の「次の一手」を、実行まで。

01

プロジェクト
マネジメント実行支援

選定・導入・更新の現場で、計画から稼働まで伴走。要件の抜けや運用の穴を塞ぎます。

02

マネジメント
コンサルティング

経営と現場をつなぐ視点で、医療機関の意思決定と業務改善を支えます。

03

システム
コンサルティング

標準化の波を自院の業務に落とし込む。ベンダー中立の立場で最適解を導きます。

04

受託開発業務

27年の実装知見で、医療現場で本当に動くシステムを確実に形にします。

私たちの強み

数字を見るだけでは、医療は変わらない。

01

電子カルテ27年の実装知見

汎用機の時代からAI活用まで、医療情報システムの進歩とともに歩んできた現場の知見が土台です。

02

現場と制度の両側を知る

告示・通知などの一次情報を押さえつつ、現場で何が起きるかを併せて読む。机上論で終わらせません。

03

ベンダー中立・忖度しない

特定製品ありきではなく、医療機関にとっての最適を率直に。だからこそ言える本音があります。

04

見る→決める→動くまで伴走

課題の可視化で終わらず、意思決定と実行までを支える。動くものを、確実に届けます。

会社案内

ITで医療の未来を想像し、人の未来に貢献する。

会社名株式会社医療ラボ
代表者代表取締役 髙月 常光
所在地〒279-0041 千葉県浦安市堀江3-28-31
電話090-8893-2345
事業内容プロジェクトマネジメント実行支援/マネジメントコンサルティング/システムコンサルティング/受託開発業務

その「次の一手」、
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